「これはリアン様よく来られましたな」エイルの父親が答える
「皆様、こんにちわ、久しぶりに会えて嬉しいです」
リアンと呼ばれた淡い金の髪をした13歳前後の少年は微笑みながら、そう答えた。
彼、リアンの服装は青いチュニック、膝下程の長さ、金の帯で腰の辺りで締めて、留めている、首はV字で金の縁の刺繍、服の裾も同じく
「リアン様、お供の方、ケンタウロスの女騎士…確かレグルス様は こちらにはお通しされなくてよいのですか?」
「いえ、彼女レグルスは向こうで控えてるそうですただ、良ければ何か……」
「ええ、お酒がお好きでしたね 召し上がれますか?」
「いえ、それには及びません、一応、僕の警護 仕事中ですからね」
「では、何か飲み物と軽い軽食でも 召使に用意させましょう」
「有難うございます エリンシア姫様」
「エリンシア姫様は いつもお優しくて
数年前に亡くなった身分の低い母をいつも庇ってくださって感謝してます」
◆ ◆ ◆
「そんな・・あの方は、リアン様の母君は、とても、物知りで、色んな事を教えて下さったわ」
懐かしむようにエリンシアはため息をつき
「それに、同じ白の宗主様の側室でしたから
あの方こそ 私を何度も助けてくれましたわ」
◆ ◆ ◆
「エリンシア姫様」
「さあ、お茶とお菓子のお替わりは如何ですか?羽琴の演奏をしますが 何かリクエストがあれば?」
「有難うございます、では、夜想曲を・・」
「あ!叔母様 僕は、雪花祭りの歌が聞きたいです」
と…こちらはエイル
「はい、はい、わかりました、では夜想曲から」
◆ ◆ ◆
羽琴と呼ばれる琴の楽器
大きく 琴が幾つも 一つは正面と斜め横にと また3つ琴と弦が重なりあい
下には、土台がそれらを支えている。
小さな椅子に座り 巧にその弦を弾きらして 音楽を奏でていた。
それは…妙なる調べ
次々と曲がリクエストされて
夕方の近くまで、その演奏会は続いた
◆ ◆ ◆
楽しいおしゃべりの後で
「では エリンシア姫様、僕はこれで…」
少年のリアンが礼儀正しい仕草で席を立つ
「良かったら、リアン様、夕食でも?」
「いえ、明日、家庭教師から出される試験がありまして、帰って勉強しないと」リアンは答える
「じゃあ!またね、リアン兄様、僕らは夕食まで叔母様と食べるよ」エイルが笑う
「リアン様、では、また…」
「はい!また」
リアンは 女騎士である白銀の髪のケンタウロスの背に乗り 帰路についた
◆ ◆ ◆
「リアン殿」
そっと、白銀の髪のケンタウロス・・美しい女騎士、戦士のレグルスが声をかける
「二人だけの時は、リアンでいいよ」
「そういうわけにも・・な・・リアン殿
ところで あれが 噂の羽琴の姫君か?
向こう側の部屋にも演奏の音が流れてきたが 素晴らしいものだったな」
「エルトニア姫の身代わりに黒の国へ行くだって…?
あの噂は本当なのか? エルトニア姫は あの姫の‥…」問いかけるケンタウロスのレグルス
「そうだよ、エイルは姫の本当の子供だよ」
リアン
リアンは質問に…ケンタウロスのレグルスに答えた
「そうか…」 「・・・」
「何も知らずに、エイルも可哀そうに、そして実母のエリンシア姫も、あの敵の国の黒の国へ行かされる」
「人質は下手すれば、処刑される」
硬い表情のリアン
「運命とは、時に残酷なものさ、リアン殿、仕方ない」
「人質として来る、黒の国の王子アーシュラン、アーシュか
どんな子供かな? エイルより2,3しか歳が変わらないと聞いた?」
「さてね、しかし、その名前聞いた覚えが…?」とレグルス
◆ ◆ ◆
「え?」リアン
「まさかね、偶然の一致、まあ、気のせいだろう、あの地底湖での出来事はかなり昔だ」とレグルス
「?」きょとんとするリアン
「そろそろ リアン殿のお屋敷に到着だ 食事が待ってるぞリアン殿」
「レグルスは酒と食事だろう?」
「もちろん!」レグルスはニヤリと笑う
「お土産があるの、小さな肖像画」ティンタルがそう言って手渡した小さな肖像画◇ ◇ ◇あの晩 先の黒の王・金の瞳をした竜の王 私を抱いた王は言った夢うつつの中で聞いた・・あの言葉「そなたの実の子供・・エイル、エルトニアはとても面白い運命をたどる 息子のアーシュランと深く結ばれる運命とはな」とうの昔にエリンシアに触れて、 エリンシアの過去を そしてエイル、エルトニアの未来を 過去見の力と先読みの力を持った あの方は そう言った◇ ◇ ◇「ああ、エイルとアルテイシアはとても仲が良いそうよエイルがアルテイシアの為に リュートを弾いてあげたり アルテイシアはよく黒の王宮を訪ねたり 少し前に 自分の湖畔にある城にエイルやリアンを招いて宴をしたそうよアルテイシアは アーシュラン兄様の事は諦めてないらしくて 第二王妃の座を狙ってるみたい、噂話だけど」 首をすくめるアムネジア◇ ◇ ◇「そちらの絵は今のアーシュラン兄様とエイル・エルトニアにアルテイシアよ」三人の人物の絵若い男性が左側に立っていて 真ん中に置かれたソフアに二人のまだ17,8歳の娘が仲良く座っていた。長いウエーブのかかった金の髪 ストレートの長い耳元の辺りで左右の横の髪を少し切っている黒髪の少女金の髪の少女は長いウエーブのかかった髪をポニーテールにして 大きな瞳青と金に近い茶色のオッドアイの美しい少女 白を基調とした 裾の短い服を着ている・・胸元には 大きな金の飾り 裾には 金ラインの裾飾りこれがエイル・・エルトニアなのね涙ぐむエリンシア長い黒髪の少女は あのアルテイア姫アーモンド型の大きく少し吊り上がった瞳 淡い緑色の刺繍の入った 裾の短い服 大きめの胸元には少し開いて見えて 金のエメラルドの宝石の入ったネックレス◇ ◇ ◇左の人物 黒髪の青年 吊り上がった瞳 精悍な顔立ちあの不思議な焔の瞳・・王女テインタルと同じもの黒髪は肩より少し長い髪を紐で縛っている 金の輪を 頭に被り 金の縁取りをされた黒い服を身につけ 肩に深紅のローブを斜めにかけて その深紅のローブに細長い金模様のライン状のものがついている腰には同じく深紅の布でベルト代わりに縛っている。彼女二人を守るようにソフアの傍近くに立っていたのだった。◇ ◇ ◇そし
ティンタルの話は驚愕するものだった。「黒の王アーシュランは、兄様は、ただ一人を救いたいが為に恋した一人の白の姫、エイル、エル卜ニア姫…その為だけに白の国を救ったわ」え?今、なんとティンタル王女は言ったのだ?エイル、エルトニア?私の産んた、恋人との忘れ形見? ティンタルは言葉を続ける。「アーシュラン兄様、黒の王であるアーシュラン兄様が子供時代、白の国の人質の時代にエイルと親しくなって恋したみたい」「でも…でもね」ティンタル王女「当然、黒の王国を滅亡に導いた白の王国には皆は悪感情しか無い何より、二千年近く戦ってきた敵同士の仇(かたき)よ」「皆を説き伏せ、合意を得られぬらまま、白の王都を取り囲んでいた巨人族の大群、軍勢を蹴散らした」 「まあ、黒の大貴族リュース公は、白の王族達の血を引き、長い間、和平の為に尽力してきたのだけど」「それにリュース公もアルティシア姫もエリンシアが大好きで…」「エイルがエリンシアの血縁と知り、それは可愛がっているわ」「アルティシアは実の姉妹のような、仲が良い妹扱い」「大使と婚約者の名目でエイルは黒の国に居るわ」「何でも、両性のエイルは最初王子として、従妹のレリヤ姫と婚約してたらしいけどね、無理やり恩着せがましく、兄様が黒の国に連れ去ったらしくて」「天然で明るく、屈託のない性格に愛らしい姿のエイル」「アーシュラン兄様は料理が趣味なので、自分の専用のキッチンがあるのだけど」「私が、黒の王宮に女官として潜入してたら、アーシュラン兄様のキッチンをエイルは料理しょうとして、爆破させたみたい」え…?た、確かに料理は…それから勉強も不得意で、エイル、あの子は…何故、キッチンが爆発?「ああ、黒の国の言語はアーシュラン兄様がみっちり、叩き込んだらしいわ」「料理の腕前も最悪ね、お腹を下す者達が続出よ」ティナを抱き締める自分の手が震える…エイルには料理は…教えられなかった勉強も…得意は釣りとか木登り、楽器は少し扱えたのだけどティナには、料理などはしっかり教えなくては!「食事の準備をしなくてはね、エリンシア、白と黒の国の食材がまた、手に入ったわ夕方にはアーサーもご帰還よ」頷くエリンシアでも、あの子がエイルがあの時に見た黒の王子と…なんて運命の巡り合わせなのかしら?あ、そう言えば、誰かが…そんな先代の
ティンタルと家にある蒸し風呂、サウナに入るエリンシアティンタル王女の肌あの白磁の滑らかで美しい白い肌に彫られた残酷な文様の入れ墨に、息を飲み、気が遠くなりかけた。「奴らは私を下僕にする為に彫ったわ、片方の胸の上まで、心臓の上に…とても辛かったわ」「生憎、私を抱く事だけは…私の魔法が暴走するから出来ないけど」熱源に時折、水をかけて、木の椅子に並んで座り、エリンシアは娘のティナを膝に乗せ抱き締めている冷めた表情で淡々とティンタルは入れ墨の事を話すのだった。「黒の国へ潜入してたわ…兄様は王として活躍していた」「ただ一人を救う為に、黒の国を裏切り、滅亡に導いた白の国まで救うなんて、英雄ね」其れは…どうゆう意味なのだろうか?すぐには、その理由の話を黒の王女であるティンタルはしなかった。「…熱源の薪にしても、火の魔法石にしても高価だったり、時に入手が大変でしょう」微かに微笑して、ティンタルは手をかざすと幾つかの火の魔法石を生みだす「炎の魔法なら、得意だから…まあ、永続的なものでなく、消耗品ね」「私も巨人族の王達にとっては都合の良い駒で消耗品」ティンタルの手をそっと握り、見つめるエリンシア もう片方の手は小さな我が子ティナが自分の膝から滑り落ちないように軽くティナの身体を抑えていたのだった。「あ〜赤くて綺麗、ティン様の赤い瞳と同じ」小さなティナが笑いながら言うエリンシアの膝に座るティナにティンタルは微笑してから、そっと頭を無でた。「やはり、暖かくて、心地よいわ雪は美しいけど、寒さがこたえるから、エリンシアも無理しないでね」ティンタルの言葉に微笑みながら、頷くエリンシアそっと膝からティナを降ろすとドアを開け、冷やして置いていた甘いレモン水が入っている壺とカップを蒸し風呂の中にカップに注ぎ、ティンタルに手渡すエリンシア 勿論、小さなティナに自分にもレモン水をそれぞれカップに「冷やしたレモン水ね、美味しいわ」
無力なエリンシアに出来た事はただ耐えて、愛する夫を待つひたすらアーサーの帰りを待った…待ちわびた永遠のような救いのない絶望の日々ある時、ようやく待ち望んでいた事が起こる。彼はテインタル王女)に伴われて帰って来た ついに夫のアーサーが現れたのだった。◇ ◇ ◇「戻ってくるのが、遅くなってすまないエリンシア!」そう言って、愛するエリンシアを抱きしめるアーサー 「……」涙を流して、愛しい夫のアーサーに抱きしめられるエリンシア「待たせて、すまない、辛かったろう」「……」アーサーの手の平に指先で短い単語を一つ書く『許して…』筆談でエリンシアは私を許してと書いた。 意味を察し、エリンシアの涙を拭う「君のせいじゃない、守れなかったのは僕だすまない、許してくれ、エリンシア」◇ ◇ ◇「ずっと生き残った者達とともに捕虜として黒の国の収容所に囚われていた」「捕虜交換で戻れたよ、エリンシア」「ずっと前の戦(いくさ)」「一度、黒の国を滅ぼして その時に奴隷にする為に、この巨人族の連れていった黒の国の人間や貴族達…ああ、前の戦で捕まえた白の国の民達も」「多くは女たちだがその者達と交換で他の捕虜達と共に戻って来れたよ」「ティンタル王女も鎧の姿で、弱った仲間達の護衛をしてくれてね」軽く首を横にして、微かに微笑するティンタル「・・・」抱きしめられたまま話を聞きながら、涙を流すエリンシア「本来なら、エリンシア、貴方も・・戻る事も」首を振るエリンシア そっとアーサーの唇に自分の唇を重ねアーサーを見つめる。「大事な娘のティナにも会いたいよ」二人の邪魔にならないようにティンタル王女はその場から立ち去った。
王の城で迎える最初の夜、エリンシアは王に呼び出され…其れから「羽琴を用意させた、一曲所望する」王が言う頷くとエリンシアは曲を奏で始めた。ワインを飲みながら、巨人族の王は満足そうに聞く「もう、良い来いエリンシア、お前は変わらず美しい」「私の情けで、存分に悶え、泣くが良い」押したされ、服を引き裂かれるエリンシア耳、エリンシアの猫に似た独特な耳元で囁く言葉は残忍な王らしい言葉だった。「我に従え、足を開け…我を満足させろ、でなければお前の夫か娘にツケを払わせる」「…!」羽琴の演奏の後で ベットに押し倒され、抗えずに玩具のように扱いを受け、乱暴された乱暴で残忍な絶対権力者である王実の弟、恋人を殺した白の宗主の側室にされた記憶が涙と共に錯綜して重なるただ、泣いて耐えるしかないエリンシアまた…あの悪夢の始まりだった。時々、許しを受け、訪ねてくるアーサーの優しい叔父夫婦に自分の子供ティナ 夫の友人達なかなか、会えないが…テインタル王女ティンタルとの再会が救いであった成長する事に美貌の黒の王妃にますます似て美しくなるテインタル王女「白の国は巨人族の猛攻から自分達の国を守ったわよ、エリンシア姫、実は意外な救援が来たらしいわ」ある時、ティンタル王女はそう話した。「!?」意外な救援が?何はともあれ、故郷の白の国は無事らしいエリンシアは大事な自分の小箱を開ける。リアンに貰った金の髪飾りに 白の国の皆の絵 エイル、エルトニア幼い子供姿の絵エイル‥エルトニアはどっちの性を選んだのだろうか?もしかしたら リアンの花嫁になったかも知れないところで、後に知った…戦(いくさ)の事だが白の国の侵略は突然現れた 黒の国の王‥火竜王、アーシュラン王の援軍により巨人族は敗退して…。白の国の裏切りで、黒の国は一度、滅ぼされたはずで…。長い間、数千年、戦いあった敵国憎い敵のはずの白の国を何故、黒の国が救ったか…?実はそれは余りにも、意外な理由王の個人的な理由であり、エリンシアにも関係深い事情であったが…。だか、大きな問題が一つ…その戦いの中でアーサーは行方不明となり 戦からは、帰還しなかった。
其れは悪夢の再来と…白の姫エリンシアにとっては信じられない戦の始まり数年の月日が流れて…生き残った黒の王子達により、黒の王国が奪還され…数年後一度滅ぼした黒の王国、国交が悪くなった白の王国との小競り合いが続いていたそんな、ある日の事◇ ◇ ◇巨人族の国では まだ長く寒い冬の中だった 雪が国中を覆うエリンシアは暖炉で暖まりながら 椅子に座り 温かなミルクで作ったシチューをティナと食べていた。「ママ、また、魔法画の幻獣達に綺麗な黒のティンタル様とお茶したり、遊びたい、其れからサウナ、スチー厶バス、蒸し風呂」ティナの言葉に微笑して頷くエリンシア魔法画の幻獣達は数日に一度、城を抜け出してはエリンシアとティナに会いに来るのが日課となっていた。時々、ティンタルとも鉢合わせしたならば、皆で楽しく過ごす事も…。其れから泊まりに来た黒の王女ティンタルサウナに幾度か共に入ったが、彼女の白磁のような滑らかな綺麗な身体には呪いの入れ墨切ない表情のティンタルを思い出す家のドアが開き、夫のアーサーが帰宅した。「ただいまエリンシア、ティナ」「おかえりなさいパパ」其れから、食事をしながら彼は言う「今度、大きな戦がある」アーサーは言った「王は 貴方に 私が戦に行ってる間 王の城に戻るようにと 命令された」「・・・」もしや・・王は また私を?そう思い、顔色を変えるエリンシア「王命には逆らえない」少し震えて自分の手を握り締めるアーサーもそう思っている様子もう一つ、アーサーは白の姫であるエリンシアに言えない事があった。黒の国から敗退した後、次に巨人族の王はエリンシアの故郷、白の国に侵略を開始今度は白の国の侵略ため息をつく◇ ◇ ◇次の日、荷物をまとめ子供のいない優しい叔父夫婦に子供のティナ預け 「良い子にねティナ」「ママ、パパ」アーサーは戦場にエリンシアは 巨人族の王の居城に向かう別れ際、エリンシアとアーサーはくちずけを交わすその後、間もなく「街で白の国の民が大勢、連れて来られた、奴隷市場が賑やかになって」「生憎、今は白の貴族でなく、国境の普通の人族ばかりだ」「巨人族の王は今度は白の国を手に入れる気だ」王城に向かっていたエリンシアに聞こた会話に街中で荷馬車の鉄檻の中で泣く白の民達の姿街の騒ぎを偶然、耳にして